開封
開封・検品作業はWebカメラで一部始終を撮影しながら行いました. アリエクからの荷物を開封するときなんかは面倒でここまでやらないんですけど, 流石に不安だったので……
いつものJLCの箱.
梱包
箱全体は緩衝材で一杯になって荷物が暴れないようになっていました.
パーツは全て一纏め(組み立てたような状態)にしてプチプチとラップで簀巻きにされていました.
私の設計の場合はこの梱包で特に問題なかったようです(構造的にプレートが暴れたりしないので).
ただ, JLCの梱包が雑で輸送中に傷が付いたという報告をどっかのDiscord鯖で読んだ記憶もあり, この辺は梱包担当者ガチャの要素があるかもしれません……
検品
結論から言うと, 状態はかなり良かったです. 何これ? 初回SSR確定製造ガチャ? 困惑していて検品中に写真は殆ど撮っていなかったため, 大体事後的に撮ったものとなります.
Top/Bottom Cases
ネジ穴
穴加工ミスZ-Stock補填なしの報告を直近に見ていたので怯えながら各パーツをネジ留めしていきましたが, 何の問題もありませんでした. レアケースではあるのだと思います. いや値段考えるとあんま文句言えるものではないけど流石にZ-Stockの補填はしろよと思うが.
色味
JLCの上げているサンプル画像ではA6061のBlackは黒が薄めに見えていてちょっと不安だったのですが, 実物はちゃんと濃い黒の色で, WoBと組み合わせて問題ない感じでした. 写真だと光沢で薄く見えていただけっぽいです.
表面処理
全体的に内部も含めて綺麗で, 封孔処理がアレで色ムラがーみたいなこともありませんでした. 打痕なども特になかったです. ただトップケースの一部箇所だけ, それほど気になるものではないもののちょっと質感の悪い部分がありました(後述します).
Bead #120 Meshも個人的にはちょうど良い感じだと思いました. 表面処理のオタクくんがTGRの表面処理って120番相当のそれでそんなに良くなくってェ……とか, アルミナ180番がさァ!とか言ってるのを見てきたので細かい方がいいんだなーと雑に思っていたのですが, 別にBead #120でもいい気がします. 実際に細かいの試してみたら変わるかもしれませんが.
USB Type-C 周辺
USB Type-C周辺の設計は実際に加工した際に綺麗になってくれるか少し不安だったのですが, モデリング上のそれそのままに綺麗に作ってくれていました.
かなり大きめに設計したのでLindyのUSB Type-C Specをガン無視したクソデカ端子も問題なく使えます.
継ぎ目
最後の最後で納品データをガバってボトムケースだけ継ぎ目の処理を間違えた件は前回書きましたが, これがどうなっていたかというと……
……?
ちゃんとトップケースのR0.2が処理された上でこうなったのか, それが無視された結果こうなったのかよくわかりませんが, まあなんか特に違和感ない感じに仕上がっていました. 完徹早朝のガバチャーは許されたらしいな.
本来の設計的にはFrog MiniやDalco 959 Miniのような感じになるはずで, それとは異なりますが, まあよいでしょう.
Plate
本当に何一つとして文句を付けるところがありません. これが$31.71……? プレートみたいなパーツ単品に関しては今後も発注していいんじゃないかなと思いました.
"Red"の色味が実際どうなるのかJLCのサンプルや他人の上げてる成果物の画像ではいまいちわからなかったのですが, 少なくともプレートの色としては良い感じだと思いました. 筐体の色として使うならもっとドス黒い血みたいな方が好みかな.
Weight
flatnessを指定した甲斐があったのかわかりませんが, 特に歪みもなく綺麗な状態でした.
開封時点で指紋が多少付いてはいましたが, 元よりこんな簡素なウェイトを手間かけて保護する気はない(patinaらせるつもり)ので本当にどうでもいいです.
重量
Un-Built Weight (Top + Bottom + Weight)は1,030g, Alu Plateは58gでした.
JLCの自動見積もりではApprox. 1.6kgということになっていたのですが, どう考えてもこのウェイトの大きさでその重量はないだろと思っていたところ, やはり盛られまくっていたようです. 梱包の分を考慮して見積もるとかにしても流石に盛りすぎだろ.
値段相応だった箇所
とまあ全体的によくできていたのですが, 一応, 値段相応だな〜と思った箇所が2箇所だけありました.
フィレット処理時の成形痕が残っている
フィレット処理時の成形痕が全体的に残っていました.
とはいえ外部に露出しているのはボトムケース裏面の角のこの2箇所だけで, 他は見えないし, 値段を考えると全く文句を付けるようなものではないと思います.
気になる場合はCNC RemarksとかTech Drawに書けば対応してくれるかもしれません (追加料金はかかると思いますし, そこまで気にするならAlibabaで信頼できる工場探せよ感はありますが).
トップケースの一部箇所だけ表面の質感が悪い
トップケース前面右側のみ微妙に粒立っており, 表面の質感が異なる, というか明確に悪いです.
多分トップケースのどっかの工程(ブラスト処理?)の担当者がちょっと雑だったんじゃないかと思います.
とはいえ本当に一部かつ幸い基本触れることのない箇所でもあり, 黒ケースなこともあり影に隠れて全く目立たないし, どうでもいいとまでは言わないものの大した問題ではなく, 値段を考えるとこれも文句を付けるようなものではないと思います.
検品していて設計について思ったこと
検品中にこれ失敗したなと思う設計が二箇所三箇所あったので書いておきます.
なおこれらの問題は修正済みの状態で公開してあります. 今後この筐体を作る気ないしテストしませんが, 多分問題ないです (一応このプロトタイプ版そのままのファイルもリポジトリに同梱しています).
UDBの下の部分が狭い
見ての通りUDBの下の部分が狭いです. これだと余分なケーブルの逃げが少なくなってしまうし, ケーブルを挿し込むときも指を入れる余裕がなくて取り付けが微妙に怠いです. Bakenekoとかがこういう設計だったので多分大丈夫だろと思っていたのですが, 下側に円形で広げて余白を確保するようにした方がよいと思いました.
ところでH60 JST Positionに15cmのケーブル(Aliexpressで買った)は長すぎ, かといって10cmのそれでは短すぎるので, LCSCで発注した方がいいかもしれません.
組み立てサポート的な機構を付けなかった
継ぎ目のある2ピース構造でよくある, というか多分ほぼ全ての設計で付いている, 組み立てサポート的なやつを実装しませんでした. 確かにこれは実際にキーボードを組むときにはPCBがボトムケースに干渉してくれるため別になくてもいいのですが, ケース単体で検品作業をするときにちゃんとネジの位置を合わせなければならない, 滑らないように手で抑えておく必要があるのは微妙に怠かったです. Manual Assemblyを担当した工場の人も微妙に怠かったのではないかと思います.
一応実装しなかった理由はあって, というのも初めて実際に作るキーボードなわけで, はめあい公差や工場の加工誤差についての感覚が正しいのか確信が持てず, リスクとなりそうな箇所は可能な限り排除したかったんですよね. ウェイトのはめあい公差は間違っていたとしてもウェイトだけ小さくして作り直せば済むのでいいとして, ケース側でやらかすと大変なことになるので……(まあやすりで削ってどうにかしていたとは思いますが).
スタビライザーの取り付け方向について
便宜上ここに書きますが, 検品中ではなく数日経過してから, しょうもないけど影響が甚大(かもしれない)なミスに気付きました.
というわけでプレートだけ作り直す羽目に……
ワンチャン許されないか……?
許されました
Knightはギリ耐えたけど他のやつだったらやすりで削る羽目になってたかもしれん
なるかと思われたけど許されました. めっちゃ綺麗で文句の付けどころがない仕上がりだったので本当に良かったです. スタビの寸法の規格ってどうなってるんすかね. よくよく考えると全く知らんわ.
プレートはスタビの取り付けがどっち向きでも対応できるように設計した方がいい……と言いたいところですが, それはそれで R_Shift と Enter (ANSI) の間が1.05mmになってしまうとか, Space と BackSpace についてはプレート端の最薄部が0.525mmになってしまい, 工場に突き返されるか高い加工費を要求されるか加工失敗してもお前の設計が悪いだろというところになりそうで, とにかく問題があります.
主な?60% PCBのスタビの取り付け方向について調べたところ,
PCB | Space | L_Shift | R_Shift | BackSpace | Enter (ANSI) | Enter (ISO) |
---|---|---|---|---|---|---|
H60 | Reverse | Upright | Upright | Upright | Reverse | Not Supported |
Zed60 | Reverse | Upright | Upright | Upright | Reverse | Upright |
FM-60H | Reverse | Upright | Upright | Upright | Reverse | Not Supported |
FM-60S | Reverse | Upright | Upright | Upright | Reverse | Upright |
VENOM60HE 6.25U | Reverse | Upright | Upright | Upright | Reverse | Not Supported |
VENOM60HE 7U | Reverse | Upright | Split Only | Upright | Reverse | Not Supported |
Waffling60 MX Solder/DB | Reverse | Upright | Upright | Upright | Upright | Upright |
Plain60 | Reverse | Upright | Upright | Upright | Upright | Upright |
Plain60 Flex | Reverse | Upright | Upright | Upright | Reverse | Upright |
Bakeneko60 | Reverse | Upright | Upright | Upright | Upright | Not Supported |
CK Bakeneko60 | Reverse | Upright | Upright | Upright | Upright | Upright |
CK Bastion60 | Reverse | Upright | Upright | Upright | Upright | Upright |
Keycult | Reverse | Upright | Upright | Upright | Upright | Not Supported |
Unikorn (R2) | Reverse | Upright | Upright | Upright | Reverse | Upright |
差異があるのは Enter (ANSI)だけだったので, ここだけ両対応しておけばまあよさそうです.
まとめ
Z-Stockを送り付けられるんじゃないかと怯えて過ごしていたところ, 本当に困惑しています.
JLCがやらかしそうな設計はしないように配慮したのが功を奏したところはあるかもしれませんが, でも穴加工ミスZ-Stock補填なしみたいなどうしようもない報告も複数あるわけで…… 多少値段相応の部分もあって売り物にするには厳しいかなとは思うものの, 自分で利用する分には全く気にならない程度のもので全体的に綺麗だし…… この品質のワンオフ品が送料込みで$220は宇宙すぎるだろ.
値段相応の部分はまああったし, Modern High-End的な繊細なやつは頼むべきでないと思うけど, 多少の瑕疵が気にならなそうなClassic系のやつなら選択肢としてアリなのか……? いやでもZ-Stock送り付けられた例もちゃんと知ってるしなあ.
ビルド編はビルド次第後日公開とします(部屋が荒れ果てていて半田できない).